リハビリ病院とは?回復期リハビリテーション病棟について
リハビリ病院とは、手術などで急性期の治療を受け、その後の「回復期」に、能力を回復するためのリハビリを行う病院のことです。回復期リハビリテーション病棟とも呼ばれ、入院するには、厚生労働省が定めた基準をクリアする必要があります。この記事では、リハビリ病院とはどんな病院なのか、詳しくご紹介しています。
リハビリ病院とは?
リハビリ病院とは、たとえば骨折や脳血管系の障害などの手術を行った場合、障害を克服し、能力を回復するためのリハビリテーションを行う病院のことを指します。
疾病の治療にはステージがあり、病気や怪我の症状が急激に出現する初期段階のことを「急性期」と呼びます。容態が急変するリスクも大きいため、このような患者さんを対象にしている救急病院などの「急性期病院」では、昼夜問わずの救急態勢を敷いています。
続いてのステージは、急性期病院での手術などのあと容態が落ち着き、患者さんがこれから回復を目指そうという段階で、このステージのことを「回復期」と呼びます。容態急変のリスクはほぼありませんが、合併症などのリスクはまだある状態です。そのため、そういったケアを行いながら、それぞれの患者さんの状態に合わせた目標を設定してリハビリを行います。リハビリ病院では、実際の社会復帰に必要な知識や技術を、リハビリからだけではなく、病棟内の生活からも身につけられるようになっています。
この記事では、回復期に入院して社会復帰の準備をするための病院「回復期リハビリ病棟(リハビリ病院)」についてご紹介していきます。
リハビリ病院への入院が可能な患者さん
リハビリ病院は、特定の疾患を持つ患者さんが、回復期に入院してリハビリを行うための施設です。そのため、入院対象となる疾患、発症してからの期間、そして入院期間も定められています。
リハビリ病院への入院対象となる疾患で主なものは、脳血管疾患、脳腫瘍、脊髄炎、多肢や脊椎、股関節の骨折、大腿骨や脊椎の神経、靱帯損傷、などが挙げられます。対象となる疾患を発症してから、疾患により1ヶ月から2ヶ月以内の患者さんが入院対象です。
リハビリ病院の特徴
リハビリ病院は、急性期を過ぎ、自宅復帰、社会復帰の準備をするための医療機関です。疾患により、最大で180日の入院、1日当たりのリハビリの時間は最大3時間となっています。もちろんリハビリは、患者さんの状態により、医師やリハビリテーションの専門職がメニューを判断しますので、必ずしも3時間のリハビリが毎日行われるわけではありません。また、病棟側の事情でリハビリに費やす時間が短い場合もあります。あくまで「最大3時間」であることに留意する必要があります。
リハビリ病院では、起床から就寝まで、自宅復帰したとき同様の生活サイクルで入院、リハビリを行えるというメリットがあります。リハビリ病院は、入浴補助や排泄補助などにも24時間対応しているので、入院生活をとおして、自宅や社会に復帰したときのかんたんなシミュレーションができる施設と呼ぶこともできるでしょう。
病院によっては、自宅復帰したときのことを考え、退院前から自宅の状態を調査し、生活の補助になる器具の導入などのサポートを行っているところもあります。
リハビリ病院の病棟基準
リハビリ病院には、患者さんが入院するための基準が設けられていますが、病棟自体にも、そのクオリティを決定づける基準が設けられています。この基準は「入院料1」~「入院料6」の6段階に分かれていて、看護やリハビリに当たるスタッフの数、休日のリハビリの有無、在宅復帰率などの要素が評価され段階が決定されます。もっとも高い基準は入院料1で、入院料1のリハビリ病院には、専任の言語聴覚士や社会福祉士が在籍しています。また、入院料1や2のリハビリ病院は、患者さん1人当たりの看護職員の割合も多いため、ほかの病院よりも充実したサービスが提供されると考えていいでしょう。
患者さんと家族をチームでサポート
リハビリ病院では、医師を中心として、さまざまな専門職の人たちが患者さんとその家族をサポートしています。リハビリは、それぞれの患者さんの状態や症状に合わせて行う必要があるため、すべてのチームメンバーが患者さんの情報を共有し、社会復帰に向けた最適な環境を用意します。リハビリだけではなく、関係するすべての分野のプロフェッショナルが在籍していることで、段階に合わせたサポートの提供が可能になります。
・医師
医師は、患者さんを診察し、適切な治療法を考え、理学療法士や作業療法士にリハビリについての指示を行います。リハビリは目標を設定して行うことが大切ですが、定期的な診察により、プランをモディファイしていくことも医師やリハビリテーション専門職の役割です。また、医師は看護士、薬剤師などのスタッフとも連携し、患者さんが社会に復帰するさまざまな手助けを行います。
・リハビリテーション専門職
リハビリテーション専門職は、「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」などの国家資格を持つ、リハビリの専門家です。
理学療法士は、運動能力を回復するための基本的な動作を回復、維持するためのリハビリの専門家です。「立ち上がる」「起き上がる」などの動作を反復して行うことで、機能回復を目指します。
作業療法士は、心身に障害を持つ方が社会に復帰するための日常的な作業を回復するリハビリの専門家です。「入浴」「着替える」「料理する」などの日常的な動作を、遊びや作業などをとおして取り戻すことを目的とするリハビリを提供します。
言語聴覚士は、その名称からもわかるとおり、言葉や聴力に関する障害について優れた知識を持つ専門家です。患者個別の専門的リハビリメニューを通じて、患者さんのコミュニケーション能力のアップを目指します。また言語聴覚士は、嚥下(えんげ=飲み込み)に関するプロでもあります。場合によっては医師だけでなく、歯科医や歯科助手などと協力することもあります。
看護師
看護師は、リハビリ病院においても、医師の診療サポートのほか、患者さんの心身のケアに当たる大切な役割を持っています。
栄養士
患者さんの充実したリハビリと入院生活は、「食」無しに語ることはできません。健康状態も体の大きさも異なる入院患者さんには、それぞれに合った食事が提供されます。そのため医師だけではなく、調理場のスタッフ、現場とも連携してメニューを考案します。食事の時間には患者さんを回り、好みや食事の感想を聞き、その後の献立作りに活かすこともあります。
薬剤師
医師や看護師と連携することにより、病棟内での薬物療法を全般的にサポートする専門家です。患者さんそれぞれの副作用や飲み合わせなどをチェックし、薬の投与継続是非の判断や調整を行います。
看護補助者
リハビリ病院内での食事や入浴、排泄など、生活における介護を提供するスタッフ。看護補助者は、退院後の自立を直接的にサポートする専門家です。
医療ソーシャルワーカー
主に「手続き」をサポートする役割を持ち、医師や他のチームメンバーと協力しながらサポートを提供します。社会福祉に関わるサービス、施設、人材など、退院後にもつながるサービスを熟知する専門家です。
リハビリ病院での活動
リハビリ病院では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による、個々の患者さんに合わせたリハビリが行われています。そのほか、離床活動として、レクリエーションや体操などをグループで行い、実生活に向けた習慣づけを行います。また、退院後を見据えた患者とその家族同士の交流活動なども行っています。